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【パースと背景】

 まず、背景を描くためには多少なりともパースのことを知っておいた方が良いでしょう。
 パースはパースペクティブ(遠近画法、透視図法)の略です。西洋絵画の世界では、300年以上前から絵を描くために使われています。
 簡単に言えば近くにあるものは大きく、遠くのものは小さく見えることを、正確に絵に表す技法のことです。
 物体の立体感や、風景の奥行きなどを現実と同じように表すことができます。

 漫画では、建物を正確に描く際に絶対に必要な知識ですし、普通の人物をしっかり描くためにも重要です。
 パースの基本的知識を全く持たず、さらに本能的な理解もできていない人は、絵を描けない人だと言っても過言ではありません。
 漫画では透視図法を使うことを「パースをとる」と呼んでいます。

 実は勘の良い人は勘だけで、ほぼ正確なパースを取ってしまいます。もちろんパースをちゃんと勉強すれば、勘の悪い人でも正確に建物などを描くことができます。
 ある意味、数学の数式のようなものです。理屈を覚えてしまえば、そんなに難しいことではありません。

 パースは、構図によって種類が変わります。基本的には以下の3つです。

 ./img/howto/pers.gif


 パースを取るためには、まず水平線(視点の高さ)がどこにあるか、そして消失点がどこにあるかを見きわめて、決めることが大切です。
 立体から水平線方向へ延長された線が水平線と交わる点を、消失点と呼びます。
 ただし3点透視図を見ればわかるように、物体の向きによっては、必ずしも実際の水平線上に消失点が重なるわけではありません。
 例えば、坂道の道路などは空を向いていますから、坂の下から上を見上げたような構図を描く場合には、坂道の道路の消失点は空にあるはずです。
 透視図法での水平線とは、視点の高さ(見ている者の目の高さ)を表していて、別の考え方をするなら、「カメラがどの高さに設置されて撮影しているか」を表す水準線となります。

 現実の町並みなどでは、消失点は1つではありません。建物にしても人物にしても、それぞれがそれぞれの方向を向いているからです。

 なお、人物をパースに乗せるのが感覚的に難しいときは、人物を大きな箱に入れるように立方体を描いて、それを水平線の方向へ延長することで、消失点などがうまく取れるはずです。

 人物と物体、そして背景をパースにしっかり乗せてこそ正確な構図が作れます。
 少なくとも水平線を常に取っていくことは、忘れないでください。

 繰り返しになりますが、水平線は基本的に必ず1つですが、消失点は物の向きや高さによっていくつにも変わってくると覚えておいてください。

 パースを取るためには、50cm以上の定規が便利です。2本くらい定規を組み合わせれば、大抵のパースは取ることができるでしょう。
 それでも消失点が遠いような構図の場合、慣れてくれば多少ごまかすこともできますし、比率を計算しておおよそ正しいパースを取ることもできます。
 正確にするならば、糸を消失点に止めて引っぱり、それに定規を添わせるようにしてください。これもやはり西洋絵画で古くから使われているやり方です。

  • パースの使用例 サンプル作品より
     ./img/howto/ebmemo07.gif
    ※1コマ目は3点パースです。消失点がすべて画面の外にあります。特に上の消失点ははるか彼方です。
     扉の右側、かすかに人物らしき像が見えるとかと思います。スケールの比率を確認するために描いた、主人公くらいの身長の像です。

 なお「遠近画法」と言うと、遠くのものには薄く色を塗るという、「空気遠近法」を含みます。
 普通は漫画でパースと言うと、「透視図法」のことです。


<背景を描く>

 漫画で背景というと、主に2つの種類に分けることができます。

 まず主要なキャラクターがその絵にいる場合の背景と、キャラクターとは関係のない背景つまりは風景カットの場合の2つです。

 前者の場合はまずキャラクターありきで、まさにキャラクターの背後の絵が必要となるわけです。
 これは、あくまでもキャラクターが主役であって、背景は脇役です。いわゆる、舞台装置の位置づけとなります。
 ここでは、パースをうまく使って、キャラクターと背景とがしっかり合うように背景を描かなくてはいけません。

 後者の場合は、背景というよりは独立した風景画で、多くが状況説明などに使われます。
 モブ(群衆)がいたとしても、やはり風景画になるでしょう。
 例えば、資料写真があるとして、ほぼその通りに描けば、絵としては成立します。

 背景にしろ舞台装置にしろ風景にしろ、資料として実際の写真を用意すべきです。
 ファンタジーやSFなどで現実に実在しないものについても、何か参考になるものがあると、描きやすくなります。

 少年漫画と少女漫画では、背景の描き方に傾向の違いがあります。
 比較すると、少女漫画の方が淡泊で印象の薄い背景が多いようです。影の部分をあまり黒く塗らずに、背景の存在感を薄くしています。

 もちろん、作風によりけりです。
 コミカルな画風にリアルな背景ではちぐはぐですし、リアルでシリアスな物語に手抜きの背景では拍子抜けです。
 キャラクターの絵や、物語の内容に合うような背景を描くべきでしょう。
 キャラクターの邪魔にならず、しかしキャラクターがどのような場所にいるかがちゃんとわかる背景が、漫画では良い背景ということになります。

 また風景を描く場合は、これはまた風景として、少しは主張するものがある方が良いでしょう。



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