昼あんどん   登場人物  安藤照仁(あんどうてるひと)36歳   予知夢を観る特技?のあるお人好し。  棚本葵(たなもとあおい)17歳   人の手を触るとその人の性格とかが判る家出少女。  八卦当(はっけあたる)年齢不詳(見た目25歳)   良く当ると言う評判の占い師。 ○ 部屋(早朝)   薄暗い部屋の中で安藤が、うなされ気味   にベットで寝ている。   鳥のさえずりも聞こえる。 ○ 安藤の夢   少女と街中でぶつかるカット。少女と部    屋に帰ってくるカット。少女を抱きしめ   るカット。フェードアウト。 安藤「んがっ!」   勢い良く起き上がる。 安藤「……夢か……」 安藤「……援助交際?? まさかねぇ……」   寝ぼけた感じで遠くを見つめる。 ○ タイトル   街の雑踏の中、「昼あんどん」のタイト   ル。安藤は求人雑誌を片手にスーツ姿で   浮かない顔して歩いている。 安藤「はぁ〜 36でバイトもナイよなぁ」 安藤(M)「いつからだろう…… 見た夢  が現実に起きるようになって来たのは……」   ため息まじりに空を見上げる。 安藤「まぁ、さすがにあんなのはねぇ……」   少女を抱きしめるカットをバックにニヤ   ケる。 安藤「でも……リストラされた夢は当たった  んだよな……」   上司に肩を叩かれるカットをバックに沈   んだ顔。 安藤「どっ!」 葵「きゃっ!」   安藤と葵、正面からぶつかりお互い尻も   ちをつく。葵はギャル系ファッションで、   身を固めている。 安藤「あっっ!!」 葵「あっっ!」   二人見合って驚く。 葵「あっ……あのっ、ちょっといいですか?」 安藤「あ…… はい……」   葵に誘われて驚く。 ○ カフェテラス(昼間)   安藤と葵、向かい合い座る。葵はサン   ドイッチをパクつき、安藤はコーヒー   をすする。 安藤「……で、お嬢ちゃんは、おじさんに何  の用があるの?」 安藤(M)「夢、大当たり?」   ニヤケながらも顔を引きつらせる。 葵「あ、私、棚本葵(たなもとあおい)って  言います ちょっと手みせて」 安藤「あ……はい」   葵、安藤の手を取り見つめる。 葵「……よかった ちょっとHっぽいけど  イイ人で……」 安藤(M)「どきっ!」 葵「……仕事……辞めたの? 部屋……汚い  ね…… あ・ん・ど・ん?」   神秘的な目で手を見つめる。 安藤「ちょっ! ちょっとまった!」   手を引っ込める。 葵「どぉ? 私の手相占い!」   小首をかしげる。 安藤「手相占い?今のは違うでしょう!!」 葵「でも、正解?」   にっこり微笑む。。 安藤「あんどんは、俺のあだ名……だよ……   俺、安藤照仁(あんどうてるひと)2ヶ  月前リストラされました……」   不思議そうに葵を見つめる。 葵「やったねっ!葵ちゃんっ!」   ガッツポーズ。 安藤「……なんで??」   目を丸くして葵を見る。 葵「私ね、手を触るとその人の事が何となく  判るの」 安藤「ホントっ! じゃぁ俺、いい仕事見つ  かるかみてよ」   勢い良く手を差し出す。 葵「……それはムリ……」 安藤「ん?どう言う事?」 葵「……私、その人のそれまでの事は判るん  だけど、その先が……ね……」   首を肩にすぼめ、しゅんとする。 葵「でねっ、良く当たるって言う占い師に  相談したら……」   上目遣いに安藤を見る。 安藤「……俺にぶつかるって言われたの?」   自分に指を指す。 葵「うん…… 助けてくれるって言われたの」 安藤「ねぇ、その占い師どこにいるの?」   身を乗り出す。 葵「もういないかも?会えればラッキーな人  みたいだし」   小首をかしげる。 安藤「そっかぁ……」   ため息まじりにテーブルの下に沈んでい   く。 葵「私、どうしても占いで生計立てたいんだ  よね……」 安藤「生計? もしかして、家出中?」 葵「まぁねぇ……」   葵、ほおづえついて遠くを見つめる。 葵「あ〜もう!ナンでこう、うまく行かない  んだろう!」   テーブルに突っ伏す。 安藤「ははは、でもそれ占いじゃないじゃん」   力なく笑う。 安藤(M)「! 俺って、夢で先が判るよな  …って、事は……」   少女を部屋に連れ込むカットがバック。 安藤「葵ちゃんが俺を信じてくれるなら、  名案があるんだケド」 安藤(M)「とりあえず、この娘と寝たら、  何とかなるのかぁ?」   指を立て、ちょっと引きつり笑い。 ○ 安藤の部屋(昼間)   安藤、ちょっと嬉しそう。葵は鼻つまん   でいる。部屋には小さなソファーと   テーブルがあり、その周りに雑誌やCD   がばらまかれた感じに散らかっている。 葵「くっさぁぁ〜い 汚すぎぃ〜」 安藤「男の一人暮らしなんてこんなもんだよ  適当に座っててよ」   テーブルの上に財布を置いて、部屋の   奥に行く。 安藤「ところでさぁ、家出の原因ってナニ?」   部屋の奥でゴソゴソしだす。 葵「いいじゃん!別に!」   バッグから香水を取り出し噴射する。 安藤「オヤジが臭いとか、汚いとかそんな  感じ?」 葵「そんなんじゃナイよ!」 安藤「教えてよ 俺も将来、自分の娘に家出  されたくないから知っておきたいよ年頃娘   の心情ってやつ」   奥からひょっこり顔を出す。 葵「今のあんどんさんと同じぃ いちいち  うるさいのよ!帰りが遅いとか、どこ行っ  てたんだとか! 子供じゃないんだから  勘弁してほしいワケよ!」   プイっとそっぽをむく。 安藤「それって、ただ心配してるだけだろう?  それで家出じゃ、たまんねぇなぁ」   部屋の奥からTシャツ・トランクス姿で   出てくる。 葵「パパが出てけっ!って言ったから、出て  きてやったのよ」   腕組みしてそっぽ向いている。 安藤「やれやれだねぇ」   葵の横にどっかり座る。 葵「ちょっ! なによ!そのカッコ!!」   振り向いてびっくり!安藤を突き飛ばす。 安藤「イデっ!」   床に顔面ぶつける。 葵「なによもぉ!信じらんない!!」   雑誌とかを安藤に投げる。 安藤「ちょっと待て! 落ち着いて俺の話を  聞いてくれ!!」   床に正座して葵を落ち着かせようとする。 安藤「俺さ、今日、葵ちゃんを見たんだ!  夢で……」 葵「え??」   物を投げるのを止める。 安藤「葵ちゃんとぶつかって、俺の部屋に  呼んで…… つまり俺は夢で先が判るっ  てぇ〜か、なんてぇか……なのよ」   二人、しばらく間が空く。 葵「……それで? なんでそのカッコ?」   口元を引きつらせている。 安藤「二人で寝たら、イイ夢みれるかなぁ〜  …… なんてね……」   引きつった笑顔。 葵「最低! 一人で寝てろ!」   ソファーを投げ、安藤ソファーの下敷き   になる。 安藤「んぎゃ!!」 葵「罰として、コレ没収ね」   安藤の財布をひらつかせ、あっかんべー   をする。 安藤「わっ!ばか!! 返せ!!」   葵に飛びつこうとするが、逃げられる。 ○ アパートの外(昼間)   逃げる葵、追う安藤。通行人もア然と   した顔で、二人を見ている。 葵「ちょっと! そんなカッコで追いかけて  こないでよ!!」 安藤「なら財布返せよ!!」 葵「(笑いながら)助けてぇ〜変な人が追い  かけてくるぅ〜」 安藤「(笑いながら)ばか! 誤解される  でしょう!!」 不良1「俺たちにまかせな」 葵「?? えっ!!」   不良1に腕をつかまれ止められる。 安藤「がはっ!!」   不良2、不良3に両サイドから膝蹴りを  くらい、うずくまる。 不良1「助けてやったんだから、礼はたっ  ぷりしてもらうぜ」   葵の顔に顔を近づけてニヤニヤする。 葵「!!」   葵、顔面蒼白になる。 不良1「じゃぁ〜な エロおやじ!」   不良達、葵をワゴン車に乗せて立ち去る。 葵「あんどんさんっ!!」 安藤「あ……おい……ちゃん…… くっ  そぉ……」   腹を押さえヨロヨロと立ち上がある。  安藤の周りに数人の人集りができる。 安藤「だれでもいいです! 警察に連絡し  て下さい!」   ヨロヨロと車の後を追う。その時、1台   の軽ワゴン車が安藤の前に止まる。 八卦「大丈夫ですか?」   車の窓を開け、安藤に話しかける。 安藤「女の子がさらわれました 助けて下  さい」 八卦「どうぞ乗って下さい」 ○ 車の中(昼間)   安藤は八卦の車の後部座席に乗りこむ。   八卦は慌てた様子もなく、まっすぐ前を   見て車の運転をする。 八卦「すみません…… でも、そういう運命  だったので……」 安藤「えっ??」 八卦「ぼくは八卦当(はっけあたる)あの娘  にあなたと出会う事を予言した占い師です」 安藤「えぇっっ!! ちょっと!どういう事  だよ!」   運転席の方に身を乗り出す。 八卦「あの娘はぼくに、助けを求めてきま  した でも、本当にあの娘を救えるのはあ  なただと、占いに出てしまいました」   八卦、前を見ている。安藤、顔を引きつ    らせ生唾を飲む。 八卦「あなたはあの娘と出会う事は、判って  いたハズです」 安藤「まぁ確かにそうだけど、そんな話……  信じられねぇよ」 八卦「でも……偶然にしては、デキすぎた話  じゃないですか?」   安藤を横目で見て、ニヤリと微笑む。 安藤「ああ…… まるでまんがの世界だ……   でもよぉ、それって占いなのか?」   ムスっとした顔で、八卦を見る。 八卦「もちろん ぼくは占い師ですから……」   前を向いて、クスリと微笑む。 八卦「ぼくは嬉しいです あなたのおかげで、  初めて人を助ける実感を得られそうです」 安藤「なんだそりゃ? あんたの占いは当る  って評判みたいじゃん?みんな喜んでるん  じゃないの?」   道路を縫う様に走り、ほかの車を追い   抜いている。 八卦「はぁ……そうなんですか? でも、  ぼくだけの力じゃ解決してあげれない悩み  ばかりですよ そんな時は後のクレームが  怖くて、ついつい場所を変えたりしてしま  います」 安藤「ははっ 会えればラッキーって、それ  なんだ」   苦笑いをする。 安藤「あっ! あれだ!!」   3台ほど前の車を指差す。 八卦「わかりました じゃぁ、準備しておい  て下さい!」 安藤「おう!!」   安藤、八卦、顔を引き締める。 安藤「……準備って、ナニ?」   顔を引きつらせる。 八卦「ぼくにできない事をあなたがするん  です!」 安藤「んぎゃ!!」   車のスピードを上げ、不良達の車を追う。   その反動で安藤は後部座席に吹っ飛ぶ。   八卦の車はほかの車を追い越しながら、   不良達の車の横にぴたりとつける。   不良達の車の後部の窓から不良1の背中   が見える。 八卦「じゃぁ、後はお願いします!!」 安藤「ちっくしょぉぉ〜〜!! 俺はブルー  スウィルスかっ!! ダイ・ハードかっ!!  ってぇぇ〜〜のっっ!!」   軽ワゴンのドアを開け、身を乗り出す。 安藤「もう……ちょっ……と……」   手を伸ばし、不良達の車のドアに手を   かけようとしている。 ○ 不良達の車内。(昼間)   不良3が運転し、不良2が助手席に座り   後部座席を見ている。葵は後部座席に   仰向けに寝かされ、不良1が馬乗りに   葵を押さえつけている。 不良1「いつまでも暴れてんじゃネェよ!」 葵「だったらそこどいてよ!! すけべ!!」 不良1「助けてもらって、すけべはないだ  ろう〜〜」   葵に顔を近づける。 葵「あんたなんかに助けてもらわなくても、  逃げ切れたわよ!」   不良1をにらむ。 不良1「ウッセェ!!このアマ!!」   葵の服の胸元を破く。 葵「きゃぁぁ!! 助けてパパっ!! あん  どんさん!!」  目をつぶり絶叫する。 安藤「おうっ!! まかせろっ!!」   不良達の車のドアを開け、乗り込もうと   している。 不良1「なっ!! てめぇ〜どうやってっ!」 葵「あんどんさん!!」   不良1、葵おどろく。 不良3「ふざけんなっ!」   スピードを上げる。 安藤「わっっ!ばかっ!!」   片足を車内にねじ込み、不良達の車に   しがみつく。 不良1「はっはっは! カッコ良かったぜぇ  〜 一瞬なぁ」   安藤の顔に顔を近づける。 不良1「その体型なら落ちても大丈夫だな」 安藤「落ちてたまるかぁぁ〜〜」   不良1、安藤とにらみ合い、安藤の手を   車から放そうとする。 葵「いやっ! やめてぇ!!」   不良1を突き飛ばす。 不良1「うわぁ!!!」 安藤「ふぎゃ!」   不良1、車外に飛び出し、安藤にしが   みつく。 安藤・不良1「(同時に笑いながら)殺す  気かぁぁ!!」 葵「(笑いながら)ごめんなさい! だっ  てぇぇ〜〜」 安藤「葵っ俺に捕まれ!! こいつクッショ  ンにして飛び降りてやる」 葵「やだっ! そんなのコワイよぉ」 安藤「じゃぁ、サイドブレーキを引いてやれ!  とにかく車を止めるんだ!!」 不良2「そんな事させるかっ!」   シートを倒し、葵に抱きつこうとする。 安藤「テメーもコッチこいやぁ〜!」   腕をのばし、不良2の髪の毛をわしづ   かみにする。 不良2「うわっ!いでででで!!」   ドア付近で体を広げ踏ん張る。 不良1「わっ!落ちるぅ!早く車を止め  ろぉ!!」 不良3「わっわかった!ちょっと待って  ろ!!」 葵「そぉよ!早く止めなさいよ!!」   後ろから不良3の首を絞める。 不良3「わがっ……だ…… 苦ひい……」   不良達の車、蛇行しながらスピードを   緩める。 安藤「おっ落ちるぅぅ!!」   歯を食いしばり、鼻息を荒くする。 安藤・不良1・不良2「うわぁぁぁ〜〜……」   車から落ちる。 葵「あんどんさん!!」   不良3の首を絞め込む。 不良3「げふっ!」 葵「きゃぁ!」   不良達の車、電柱に軽くぶつかり止まる。 葵「あん……どん……さん」   ふらつきながら車から降りてくる。 ○ 路上(昼間)   建物も人気も無い舗装道路。車は何台か   行き交っている。安藤は不良1、不良2   を両脇に抱え、もみ合っている。 安藤「葵! 俺はいいから、早くヤツの車に  乗って逃げろ!!」 葵「車ってどれよぉ!!」   涙目でジダンダを踏む。 安藤「あ〜〜んのやろぉ〜〜!!」   口をあんぐり開けて後ろを振り向き、   引きつり笑いする。 不良1「放せおっさん!」   安藤を突き飛ばす。 安藤「ぐわっ」   道路に大の字になる。 葵「いやっ! もうやめてぇ」   安藤の元に駆け寄り抱きつく。 安藤「ばかっ!逃げろ!!」 葵「だって!だってぇ!」 不良1「二人まとめて殺(や)ってやるぜぇ」   ナイフを取り出し身構える。 効果音「ふぁうぅぅぅぅ〜ん……… ふぁう  ぅぅぅぅ〜ん………」   遠くからパトカーが来るのが見える。 不良2「おっおい! やべぇぜ!」 不良1「おっおう!!」   そそくさと車に乗り込み、いなくなる。 安藤「たす……かっ……たぁ」   目で天を仰ぐ。 葵「ごめんなさい!ごめんなさい!」  安藤の胸に顔を埋め、泣きじゃくる。 安藤「謝って済むと思うな!! ばか娘ぇ!」   葵を抱きしめながら、上半身起き上がる。 安藤「こんな事……めったに無いけど、アル  からお父さん心配するんだぜ」   葵を抱きしめ直す。 葵「……うん……」   安藤の胸で小さくうなづく。 安藤「分かったらさ、家に帰ろうよ……   お父さん葵の事、すんげぇ心配してるよ…  …きっと……」 葵「……ホントに……」 安藤「ああ……帰ったらお父さんの手さわっ  てみろよ…… お前判るんだろ?」 葵「……うん…」   パトカー二人の前に止まる。 警官1「そこまでだ!!変質者っ!!」   安藤を羽交い締めにする。 安藤「えっっ!! なんだそりゃ??」 警官2「もう大丈夫だからねっ!ねっ!」   葵を安藤から引き離す。 安藤「(笑いながら)ちょっとぉ!! 誤解  だって!!」 警官1「下着姿の男が少女を追いかけて連れ  去ったって通報があったんだっ! おとな  しくしろ!!」 安藤「(笑いながら)やっ!! 確かに断片  的には合ってるけど!ちょっと待てぇ!!」   安藤、暴れながらフェードアウト。 安藤(N)「葵の証言で、俺の無実は証明  された……」   画面真っ黒。 安藤(N)「葵とはその後合ってないが、  お父さんらしき男と楽しそうに手をつない  でいる夢を見て、ちょっとホッとしてたり  する……」   葵と父親、仲良く手をつないでいる。 安藤(N)「でも……今の俺には、その光景  が現実に起きている事なのか……確かめる  術はない」 葵「あんどんさぁ〜ん」   葵、笑顔で小さく手を振るカットを最後   に、昼あんどん終了。