『ミルク味ストロー』  作 渡辺ジェット ○登場人物  幹本  男、私立中学1年  手島  女、同上  染矢  男、幹本の友人  古田  女、手島の友人  滝   女、手島の友人  他学生 通行人複数 ○中学校校舎 2階建て渡り廊下、屋上  私立中学の4階建ての校舎の間の、屋根なし渡り廊下。  天気の良い昼休み。  幹本が、屋根のない渡り廊下で昼食を取っている。  渡り廊下は2つあり、2階分とその屋上、もうひとつの 渡り廊下も並列した校舎を繋いでいる。  転落防止のコンクリ造りの手すりのすぐ下に、幹本は座っている。  幹本の昼食はいくつかのパンと、紙パックのアップルジュース。  染谷は飲み物を買いに行っていて、弁当と漫画雑誌だけがおいてある。 幹本「染谷のやつ、遅いな……」     幹本、パンを食べつつ、染谷の漫画雑誌を手にとってめくってたりしてみる。 手島「あれ〜、どっかに落っことしたのかな〜?」     手島、古田、滝たち3人が何ごとか話しながら、校舎から出てきて渡り廊下を幹本の方へ近づいてくる。     3人、めいめいに、手にパンや飲み物などの昼食を持っている。     紙パック飲料を持っているのは手島だけ。 手島「あ、ミッキー、ちょうどいいところに」     幹本に気づいた手島が、幹本を指さしながら言う。 幹本「ミッキーはやめろよ……。幹本って呼び捨てにしていいから」     幹本、ちょっとへこむ。結構、そう呼ばれるのが嫌らしい。 手島「ふむ。じゃあ、幹本君」 幹本「はい、何でしょうか手島さん」 手島「それ飲み終わったら、ストロー貸してくれない?」     手島、幹本の飲んでいるパックジュースを指さしてさらっと言う。 幹本「は?」     幹本、ストローを半分加えたままで固まる。     古田、滝、幹本と同じく手島の突然の発言に呆然としている 手島「あたしのストローなくなっちゃってんの。ダメ?」     手島、座っている幹本に合わせて幹本のすぐ前にしゃがんで、自分のパックを幹本に示す。     パックには”飲んでミルク”の表記。ストローの剥がれ跡。 幹本「いや、ダメってゆーか」     幹本、多少照れて言いずらそうに。 手島「ん? 何?」。 幹本「それって間接チューじゃん?」 手島「か…………」     手島、ボンッと一瞬で耳まで真っ赤になる。 幹本・古田・滝『……気づいてなかったのか』     3人の、心のツッコミ。 幹本「で、どうする?」     幹本、手島が言ったことを取り消すだろうと考えつつ、ストローを手島に見せるようにする。     あきれながらも、手島につられてちょっと照れている。 手島「う〜〜〜」     手島、真っ赤になって動けない。     すねたように口を尖らせて幹本とストローを見る。 幹本「いいって、そうゆうのヤなんだろ?」     幹本、手島のゆでだこのような姿に笑いながら言う。 手島「私は!」     幹本の言葉に割り込むように。 手島「借りるって言ったら借りるのっ!」     手島、言いながらストロー引き抜いて、脱兎のごとく逃走する。     手島、登場したのと反対側の校舎内にはける。     古田、滝、一瞬動けない。すぐに我に返り、慌てて手島を追いかける。 幹本「はい?」     幹本、硬直したまま。 N 「3分26秒経過。」     手島、登場して幹本に全力疾走で急速接近。     息を切らしている。 手島「はいっ、返す!!」     手島、幹本にストローを返し、また全力疾走で撤退。 幹本「いや、返すって、手島っ?」     幹本、ストローを持ったままあっけにとられている。     そしてストローを見て、ひとり照れてみたりする。 染谷「見てたぜミッキー」     染谷、手島達が去った反対方向、幹本の背後に登場。 幹本「うおっ!?」 渋谷「君はそのストローをどうするつもりかな?」     しゃがんだままの染谷、幹本の肩に手を置いている。     渋谷、妙に真面目な顔で言う。 幹本「どおって、ジュース残ってるし、使うつもりだけど?」 渋谷「君は今、人生の重大な岐路に立っているのだよ!?」     渋谷、力説。 幹本「キロって何だよ?」 渋谷「破廉恥だとは思わないのかね?」 幹本「ハレンチって何語だっ!?」 渋谷「さあ、おとなしくそのストローを俺に渡せっ!」 幹本「何言ってんだおまえはーっ!?」     会話させつつ、場面転換。 ○校舎廊下  幹本達が見える位置。直線距離で15メートルぐらい。  手島たちが隠れるようにして、幹本達を観察している。   なぜか古田と滝の手には双眼鏡があり、片目づつ覗いている。     観察されている幹本と渋谷の会話の続き。 渋谷「たとえミッキーとの間接接触になろうとも、俺は青春の1ページに美しいメモリーを刻みつけることを選ぶっ!!」 幹本「ふざけんなーっ!!」     ストローを巡って、ギャーギャー争う二人。 滝 「幹本君、必死でストローを守る! 口に入れるのか、入れるのか!? ってゆーか入れろーっ!!」 古田「おおっと、渋谷君が舌を伸ばーす!? ストローピーンチ!!?」     2人のノリノリな実況。 手島「ああっ、借りたものは返すようにちゃんとしつけられた私のバカーっ!」     手島、幹本達の方に背中を向け、耳を塞ぎながら真っ赤な顔に涙目で絶叫している。  終